預金金利 interest on savings deposit 2003 7 23

 現在は、経済非常事態ですから、超低金利政策は、やむを得ないでしょうが、
しかし、この政策は、あくまでも緊急避難的な政策です。
原点に立ち返り、預金金利は、いくらが適当かを考えておく必要があります。
 日本は、アメリカとは事情が大きく異なります。
アメリカは、消費民族です。
日本は、貯金民族です。
 この違いは、どこから来るのか。
なぜ、日本人は、貯金民族になったのか。
江戸時代は、江戸の庶民は、これほどまでに貯金にこだわったか。
 その原因のひとつに、土地の問題があります。
土地が高いために、貯金に励むことになるのです。
 アメリカでは、都市部を除けば、家を買えば土地がついてくるような地域があります。
もしかすると、世界を見渡せば、この方が主流かもしれない。
土地の値段が、日本に比べれば、格段に安い。
だから、建物にお金をかけられますので、丈夫な家ができ、
耐久年数が長い家ができます。
物件によっては、新築の家より、中古の家の方が高い場合もあります。
耐久年数が長くて、丈夫な家ですから、資産価値が下がらないし、
以前に住んでいた人が、家にいろいろな造作物を作って、
手入れを十分にしてあれば、中古の家の方が、新築より高くなります。
家を売っても、十分なお金を手に入れることができます。
 日本では、住宅の不動産価格の半分以上を、土地の値段が占めている場合があります。
たとえば、景気がよかった頃は、建て売り住宅で、4,000万円の物件の場合、
土地の値段が、2,500万円で、建物の値段が、1,500万円だった物件がありました。
このパターンに近い物件が多かったはずです。
日本では、住宅を買うとは、土地を買うようなものです。
土地を買ったら、家がついてきた。
 しかし、これでは、建物にお金がかかっていないため、
20年も経てば、リフォームが必要となります。
そして、建物の資産価値は、年数とともに、価値が落ちていきます。
 これでも、好景気の時は、土地の値段が上昇したので、
つまり、土地の価値が上昇したので、
建物の価値が下降しても、カバーできたのです。
現在では、建物の価値が落ち、土地の価値が落ちていく時代です。
これが、デフレの正体の一部でもあります。
建物が頑丈で、何世代にも渡って住めるような耐久年数が長い住宅なら、
資産デフレとは、無縁だったでしょう。
残念ながら、日本の住宅は、1世代どころか、
20年も経てば、リフォームが必要な住宅が多いのです。
 話がそれますが、バブル経済の時代に、
土地の価値が落ちていくような政策を取ったはずです。
バブル経済の時、資産インフレの時に行なった、不動産融資の総量規制です。
さらに、金利を急激に引き上げたことです。
これで、土地の価値が下降していくトレンドを作りました。
これがバブル経済を破綻させるとともに、
長期低落傾向の日本経済を作ったのです。
 消費税を3%から、5%に引き上げたことが、今回の不況の原因であると、
そう言われますが、もとの原因を正せば、
不動産融資の総量規制と、金利を急激に引き上げたことです。
これが、失われた10年の原点です。今では失われた13年でしょうか。
このような共産主義的政策を実施したため、日本経済がおかしくなったのです。
官製不況と言えます。
 あの時、取るべき政策は、
土地の供給量を増やすべきだったのです。
土地の供給量を増やすことで、バブルの熱を冷ますことができたのです。
土地の供給量を増やす方法は、
建築規制の緩和です。
これで、実質的に土地の供給量が増えることを意味します。
 飛行機の窓から東京を眺めると、
ほとんど平らです。
あの当時、世界で一番、地価が高いと言われた東京です。
地価が非常に高いにもかかわらず、平らなのは、世界は広いと言っても、東京だけです。
不動産融資の総量規制という規制ではなく、
建築規制の緩和という規制緩和こそ、取るべき政策だったのです。
 どうして、こうなったのか。
あの当時の政策スタッフの学生時代を見れば、よくわかります。
あの学生時代は、左翼思想が日本の大学を広く覆っていたのです。
共産主義思想が、日本の大学において、大きな勢力だったのです。
近代経済学は、肩身が狭く、マルクス経済学が主流の時代があったのです。
こういう時代に卒業した学生は、しっかりと、マルクス経済学を学んでいますから、
本人には自覚がありませんが、バリバリの共産主義者なのです。
だから、競争するとサービスが落ちるという発想をします。
この発想は、かつてのソ連の専売特許の思想でした。
 さて、土地がいつまで安くなるか見当がつきませんが、
しかし、それでも、庶民にとって、土地の値段は高い。
住宅を買うには、長年に渡って、貯金をしていく必要があるのです。
アメリカは、一般家庭における株の所有比率が、
日本に比べて高いので、株高になれば、一般家庭の資産は増えます。
日本は、そうはなっていないのです。
あくまでも、貯金をしてかないと、家は買えません。
だからこそ、超低金利では困るのです。
 さて、夏休み、子供に聞いてみましょう。
1万円預けて、いくら利子がつくのがよいか。
子供は、こう答えるでしょう。
利子は、500円か300円ぐらいと答えるでしょう。
これが、何パーセントだか、わかるでしょう。
子供の方が、まだ常識があります。
子供に、1万円預けて、利子が10円だと教えると、子供は驚くでしょう。
大人が、常識がなくなっているのです。
金利のモラルハザードは、いつまで続くのでしょうか。
お金を貯めて家を建てたい庶民。
こういう庶民を無視する超低金利政策は、いつまで続ける気でしょうか。